皆さんこんにちは、TaroTechです。
今回は「就活における研究概要の書き方」についての記事になります。
理系学生(特に院生)は就活で技術系を受けることが多いと思いますが、そのほとんどの場合で研究概要の提出を求められます。
理系のあなたにはこの記事もおすすめ!
この記事では化学系の元国立大学院生だった私の経験から、誰が読んでも分かりやすい研究概要の書き方について解説していきます。
1.研究概要とは?
研究概要とは普段取り組んでいる研究の背景や結果の要点をまとめた資料のことを指し、場合によっては研究要旨と呼ばれることもあります。
理系の就活では特にメーカーなどの技術職や専門職においてこの研究概要の提出を求められることが多い傾向にあります。
1つ注意なのが、就活における研究概要は専門知識を有した人だけが読むのではなく、人事の方といった専門外の人も読むことがあるため、「誰にとっても分かりやすく書く」ことが非常に大切です。
企業から提出を求められる研究概要は主に3種類あります。
種類 | 頻出度 |
---|---|
文字だけのエントリーシートタイプ(200~600文字程度) | |
用紙指定の自由に書くタイプ(A4用紙1枚/2枚) | |
パワーポイントを用いたスライドタイプ |
提出する企業によって文字数や資料の枚数などは異なりますが、特に上2つのタイプは提出を求められることが非常に多い傾向にあります。
また、経験上、ほとんどの場合がエントリーシートタイプとそれ以外の自由形式対応の両方をセットで提出されるよう指示されます。
このように理系就活では研究概要の重要性が高いことから早め早めの準備が必要になります。
この記事では主に用紙指定の自由タイプの研究概要の書き方について詳しく解説していきます!
2.研究概要の書き方
ここからは誰が読んでも分かりやすい研究概要の書き方について徹底解説していきます。
2-1.研究概要のフォーマットの種類
用紙指定の自由に書けるタイプの研究概要は大きく分けて「ポスター形式」と「テキスト形式」の2種類に分かれます。
多くの人がどちらにしようか悩むと思いますが、どちらの方が内定を取りやすいとかは基本的にないと思ってもらって構いません。
それぞれに良い点・悪い点があるので、自分の好みや先輩が使っていた形式と同じものを使うのが良いでしょう。
ポスター形式
ポスター形式は図を主体とした形式になります。
基本的にポスター形式は「Power Point」で作成するのが一般的です。
ポスター形式の良い点は何といても「デザイン性と分かりやすさ」です。
図がメインになる分、視覚的な情報を相手に伝えることができるため、一目で見たときに収集できる情報の量が多くなります。
また、専門外の人にとって難しい単語の多い文章を読むのはかなりの労力になるところが、ポスター形式なら文字が少なく図で内容を伝えることができるため、専門外の人にとっても優しい資料になります。
私はこちらのポスター形式の方を採用していましたが、面接の際に人事の方から「資料が分かりやすくて内容がすぐに入ってきた」と高評価をもらったことがあります。
このようにポスター形式は分かりやすさで差別化を図ることができます。
一方、ポスター形式の悪い点として「作るのが難しい」ということが挙げられます。
ポスター形式は図をメインとすることから自由度が高くなり、作成にそれなりの時間がかかってしまいます。
また、色の使い方や図の配置などにも工夫が必要なためある程度のデザインセンスも要求されます。
さらにポスター形式では文字が少ない分、研究の本当に大事な部分だけをピックアップして記載するため、内容を深くまで伝えるのが難しくなってしまいます。
少ない文字で内容が伝えられるよう文章にはそれなりの工夫を凝らして作成するとよいでしょう。
テキスト形式
テキスト形式は文字を主体とした形式になります。
基本的にテキスト形式は「Word」で作成するのが一般的です。
テキスト形式の良い点は、「作りやすいこと」と「内容を深くまで伝えられる」ということです。
テキスト形式は文字がメインになる分、ポスター形式に比べてデザインをそこまで気にする必要はありません。
ある程度決まった型に沿って文章を書いていけばそれなりのクオリティの研究概要が誰でも簡単に作れます。
また、文字数も多くできるため、ポスター形式以上に内容を深くまで伝えることができます。
一方、テキスト形式の悪い点として「専門外の人が読みにくい」ということが挙げられます。
文字が多くなることで内容も深くなる反面、専門外の人にとっては読むのが大変になってしまいます。
専門分野の人にとっては文字が多くても特に問題はありませんが、就活においては「知らない人にも分かりやすく」ということが重要視されます。
そのため、テキスト形式で研究概要をつくる人は一つ一つの単語に気を配りながら誰にとっても分かりやすい文章で書くよう心がけましょう。
2-2.研究概要に書くべき項目
フォーマットの種類について理解したところで、次に「研究概要に書くべき項目」について解説していきます。
必須項目は研究概要に必ず入れてほしい項目になります。
自分の研究を語るうえで上記の項目は必ず振り返っておくようにしましょう。
研究概要は多くの場合がA4用紙1~2枚程度で作成を求められるため、特に任意項目については枚数に応じて記載するかどうか判断してください。
タイトル
研究概要のタイトルは読んだだけでなんとなく内容が思い浮かびそうな分かりやすいタイトルにしましょう。
専門用語は使用しても構いませんが、本文のところで用語の解説を入れておくと読み手にやさしい研究概要になると思います。
学会や論文で使っているタイトルではなく、分かりやすいキャッチーなものを採用してみるのも可
緒言
緒言はあなたの研究を1文もしくは2文程度で分かりやすくまとめた文を書きましょう。
研究概要は最初の1文で内容の伝わりやすさや読み手の印象が大きく決まってくるため、研究を端的に表した分かりやすい文で表現しましょう。
【参考(私の研究の緒言)】
メタルフリーな有機分子触媒はコストや環境負荷の観点から、金属触媒よりもクリーンな触媒として工業的に広く利用されている。本研究では、臭素原子を組み込んだブロモニウム塩を新規開発し、世界で初めて有機分子触媒としての利用を試みた。
緒言に関して一つ注意なのが、緒言と研究結果があまりにもかけ離れているのは避けた方がよいということです。
「~を解決することを目的として研究した」と緒言に書いて、結果ではその課題が解決できていなかったら内容に矛盾が生じてしまいます。
このような場合は、得られている結果に合うような緒言に書き換えてみるという工夫を入れてみると内容に矛盾がなくなります。
研究の背景
研究の背景は以下のことを中心に書いてみましょう。
・なぜその研究を行うのか
・既存研究の問題点とその違い
・研究の内容を表す重要キーワードの説明
特に「なぜその研究に取り組むのか」ということについては、ESだけでなく面接でも重要視されるポイントになります。
研究概要をまとめるときはそのあたりも気にしながら表現してみるとよいでしょう。
また背景の部分で研究を語るうえで重要なキーワード(専門用語)についても説明を入れておくと、研究素人の人にも優しい研究概要になります。
研究の目的
この項目には背景を踏まえた「研究のゴール」を書くようにしましょう。
ゴールというのは「その研究からどのような結果が得られれば成功と言えるのか」ということになりますので、今一度研究を振り返って目的を設定しておきましょう。
結果・考察
結果と考察は研究の目的と照らし合わせて特に関連の深い結果をピックアップして書くようにしましょう。
例えば、合成した触媒を応用する研究を行っていたとしたら、
「合成した結果を詳しく書くのでななく合成した触媒を応用した結果について詳しく書く」
といった感じです。
また、結果はできる限り図や表を使いながら具体的な数字で定量的に書くようにしましょう。
考察については、結果に対して妥当な理由をロジカルに書くようにしましょう。
そもそも研究概要を課される目的として「論理的思考力を測る」という目的がありますので、面接に向けて研究結果を深掘りしておくとよいでしょう。
実験方法
実験方法については、実際に使った装置の名前や手法を記載するとよいでしょう。
特に実験装置については専門の人でないと知らないものがほとんどになります。
面接の時に聞かれてもいいように、装置の仕組みや使用する目的を説明できるようにしておくことをおすすめします。
研究で工夫したこと・学んだこと
研究で工夫したことや学んだことについては任意項目としていますが、研究概要のスペースに余力があればなるべく書くようにしましょう。
実は就活において最も重視される項目はこの項目になります。
研究をやると分かることですが、どんなに頑張ってもめぼしい結果が得られない場合は存在します。
企業としてもそういった研究の背景はある程度理解していることから、
どれだけすごい結果が得られたかということよりも、「研究の中でどんな工夫やどんな学びを得たか」という「過程」を重要視しています。
この項目をなるべく具体的に記載することで、入社してからも再現性ある行動やマインドととしてアピールすることができます。
用紙指定の研究概要は任意でも構わないが、400文字以上のエントリーシート形式の研究概要には必ずこの項目を書こう!
今後の展望
現状の研究の到達点だけを示すのではなく、これからの展望についても記載するとよいでしょう。
「頑張ってこんな結果が得られました」と言うだけでなく、その先も見据えていると示すことで向上心をアピールすることができます。
企業に入社すると中長期的な視野で物事を考えることも求められてくるため、「さらなる目標のための道筋設定」というのは重要視される項目になってきます。
このことから研究概要に「今後の展望」を入れてみるのもおすすめです。
研究実績(参加学会/論文投稿)
もし研究実績があればそれも書いておきましょう。
・学会発表
・学会で受賞した賞
・査読付きの論文投稿
何かしらの実績があるということはそれだけ真剣に研究に取り組んで結果を出してきたという証拠にもなりますので、実績がある人は是非書くようにしましょう。
実績が何もなくて書くことがないという人は、余ったスペースを活用して研究をより詳細に書き、クオリティの向上に努めましょう。
2-3.研究概要を書く時に押さえておくべきポイント・注意点6選
研究概要に書くべき項目について理解した後に押さえておくべきポイントと注意点を6つ紹介します。
語尾を統一すること
研究概要を書く際は語尾を必ず統一するようにしましょう。
語尾には大きく分けて「です・ます調」と「である調」の2種類があります。
文章を書く際の語尾は特に企業からの指定が無ければこだわる必要はありませんが、必ず統一するということを念頭に置いて資料作成しましょう。
フォントを統一すること
フォントについても1つの研究概要の中で統一するようにしましょう。
おすすめは「日本語と英数字でフォントの種類を分ける」です。
日本語→「ゴシック体」
英数字→「Times New Roman」
上記のフォントは一般的に論文を書く際などに使われるフォントの組み合わせになりますので、特に企業からの指定が無ければこれらを使うと無難です。
ちなみに「Word」ではあらかじめフォントを設定しておくことができるので、文を書く前に設定しておきましょう。
専門用語は必要最低限にとどめる
専門用語はなるべく使わず、必要最低限のものにとどめるようにしましょう。
何度も言いますが、研究概要は「研究素人や専門外の人が読んでも分かりやすいこと」が大切になってきます。
そのため研究概要を書く際は専門用語を必要最低限にしておくと高い評価が得られます。
もちろん、専門用語を全く使わないというのは難しいので、使う場合は注釈を入れるか図で説明を入れておくと読み手にやさしい研究概要になるでしょう。
目立たせたい箇所は字を装飾する
研究結果など目立たせたい箇所については太字や色を活用して文字を修飾するとよいでしょう。
色についてはたくさん使用するのではなく、赤や青だけを使ってシンプルにすることを心掛けましょう。
なるべく早い時期テンプレ化しておく
研究概要はなるべく早い時期に作成してテンプレ化しておくことを強くおすすめします。
就活が本格化してきてから研究概要を作成しようとするとかなりしんどくなります。
就活において特に技術職を受ける際はほぼ100%の確率で研究概要の提出を求められます。
そういった背景を踏まえて、自己分析もかねてあらかじめ研究概要をテンプレ化しておくとよいでしょう。
また、研究概要は一度作ってしまえば複数の企業で使いまわしが可能なので、頻出であるA4用紙1枚・2枚の研究概要については早めに作っておきましょう。
面接を意識して研究概要を作成する
面接では多くの場合、研究概要を3分~5分程度で説明した後に質疑応答が始まります。
面接官からの質問はその場で考えられているのではなく、あらかじめ提出しておいた研究概要を基に決められていることが多いです。
面接においては質疑応答の回答があいまいになったりするとマイナスな印象を与えてしまいます。
そのため、答えにくいような箇所についてはあえて研究概要に書かないで隠しておくといったこともテクニックとして必要になる場合があります。
逆に突っ込みどころをあえて用意しておいて、そこをばっちり答えることで好印象を与えるということもできるので、うまく調整しましょう。
以下に面接でよく聞かれる研究関連の質問をまとめておくので、研究概要を考える際の参考にしてみてください。
研究に関する頻出の質問 |
---|
その研究のメリット・デメリットは? |
その研究のどのような点が当社で活かせそうか? |
研究のオリジナリティな部分はどこか? |
研究で困難だったことは? |
その困難をどうやって乗り越えたか? |
研究において工夫したことは? |
研究から学んだことは? |
面接では上記の質問以外にも研究に対しての深掘り質問がかなり飛んできますので、面接までに研究を徹底的に振り返り、何を聞かれても答えられるレベルまで引き上げておきましょう!
3.研究概要の完成例
実際に就活の時に使っていた研究概要の完成例を紹介します。
A4用紙2枚分のお手本になります。
ポスター形式の完成例
ポスター形式は実際に私が就活の時に使っていたものを紹介しておきます。
ポスター形式で意識したことはぱっと見で分かるデザインにすることです。
文字は最低限に抑え図を多用することで研究素人の人にも視覚的に訴えられるポスターを作れたと思います。
テキスト形式の完成例
次にテキスト形式の完成例を紹介します。
こちらは友人からお借りしたものなのでモザイクをかけさせていただきます。
ESの研究概要見本
最後にESの研究概要の見本を紹介します。
みずほリサーチ&テクノロジーズ
研究内容(500文字以内)
化学反応を促進させる働きを持つ触媒には、金属を含む金属触媒と金属を含まない有機分子触媒が存在します。特に後者は、コストや環境負荷の優位性だけでなく水や空気に対する安定性から工業的な価値も有しています。本研究では、その有機分子触媒の新規開発を目指しました。触媒設計をするにあたり、化学的な特異性を示すことから近年注目を集めている「ハロゲン」という物質を選びました。その中でも反応中での特異性がより期待できる臭素原子を軸とした触媒合成を試みました。実際に、ブロモニウム塩を合成しいくつかの反応に触媒として適用したところ、特定の反応において生成物を高収率で得ることに成功したことから、世界で初めてブロモニウム塩が触媒として利用できることを明らかにしました。今後は、触媒の構造を平面構造から立体構造に改良していくことでさらなる新規触媒合成を目指すとともに、医薬品や農薬合成反応に応用することで+αの付加価値を生み出してけることが期待できます。
三井化学
研究要旨を、研究の位置づけを含めてわかりやすく記入してください (600文字以内)
化学反応を促進させる働きを持つ触媒には、金属を含む金属触媒と金属を含まない有機分子触媒が存在します。特に後者は、コストや環境負荷の優位性だけでなく水や空気に対する安定性から工業的な価値も有しています。本研究では、その有機分子触媒の新規開発を目指しました。触媒設計をするにあたり、化学的な特異性を示すことから近年注目を集めている「ハロゲン」という物質を選びました。その中でも比較的原子の半径が小さく反応中での特異性がより期待できる臭素原子を軸とした触媒合成を試みました。これまで、臭素原子を有するブロモニウム塩を触媒として利用した例はないため、本研究は世界初の試みとして新しい可能性の創出が期待できます。ブロモニウム塩を合成し、いくつかの反応に触媒として適用したところ、マイケル付加反応において生成物を高収率で得ることに成功しました。同反応において触媒を適用しなかった場合には反応が進行しなかったことから、ブロモニウム塩は触媒としての働きを持つことが示唆されました。また、適用反応の原料を別の構造物に変えた場合も良好な収率で生成物が得られたため、適用範囲の拡大にも成功しました。今後は、触媒の構造を平面構造から立体構造に改良していくことでさらなる新規触媒合成を目指すとともに、医薬品や農薬合成反応に応用することで+αの付加価値を生み出していきたいと考えています。
1つ目のみずほリサーチ&テクノロジーズはITやシンクタンクを強みとした企業であるため化学系ではありません。
しかしこのような専門外の会社でも研究について聞かれることがあるため、なるべく専門用語は使用せず、分かりやすい文章になるよう心がけるとよいでしょう。
また2つ目の三井化学は化学メーカーであるため化学系に精通しています。
ただ化学といっても細かい分野で見るとたくさんあるため、このような専門の会社であったとしても分かりやすい文で書くことが大事だと言えます。
4.完成したらほかの人に見てもらおう
研究概要が完成したら必ず2パターンの人に見てもらいましょう。
・同じ分野を研究している先輩や指導教員
・専門外の人(特に文系の人)
まずは同じ専門分野の人に見てもらうようにしましょう。
メーカーによっては技術面談やマッチング面談という名のもと専門知識を有した面接官と面接をすることもあります。
そのような場合を想定して、まずは専門分野の人に対して見せることで内容に問題点がないか確認してもらいましょう。
専門分野の人に見せたら、次は専門外の人に見てもらいましょう。
全く知識がない人目線であなたの研究概要や説明の仕方を見てもらうことで、難しいポイントや分かりにくいポイントを洗い出すことができます。
実際の採用の場では専門外の人も研究概要は読みますので、このように専門外の人に見てもらうことも大きな意味を持ちます。
意見を参考にさらにブラッシュアップしてみましょう!
5.おまけ:理系におすすめの就活サービス
最後にここまで読んでくださったあなたのために、「理系院生におすすめの逆オファー型の就活サービス」を紹介しておきます。
LabBase(ラボベース)は理系院生専用の就活サービスになります。
ラボベースは他の就活サービスと異なっており、プロフィールに書く項目の半分以上が研究に関する項目となっているほど理系が優遇されやすいサービスとなっています。
実際にオファーをもらって平均年収が1千万円を超えるメーカーから内定をもらった体験記も載せています。
研究概要を作成するついでに是非登録をおすすめしたいサービスになります!
アカリクも大学院生におすすめの就活サイトになります。
上記のラボベース同様、研究内容をまとめておくだけで企業からスカウトが届きます。
ぜひ、この記事を参考に研究成果を文章化できたらサイトに登録して、効率よくスカウトをgetしましょう。
まとめ
皆さんいかがだったでしょうか?
今回は「就活における研究概要の書き方」について解説してきました。
理系の強みは何といっても普段から研究に励み、いろいろなことを学んでいる点にあると考えています。
この記事を参考にしてこの機会にクオリティの高い研究概要を作ってみましょう!
皆さんの就活が実りあるものになることを祈っています。
コメント